映画「バズ・ライトイヤー」を見ましたか?
ディズニーにまた名作が仲間入りしました。
ディズニー映画は、社会的影響の大きさから、エンターテイメントであると同時に、社会に対するメッセージが込められています。
今回は、そのことを考えてみました。
ディズニー映画の社会性
目次
「バズ・ライトイヤー」の前半部分の内容を少し紹介

映画「バズ・ライトイヤー」では、おもちゃではない人間のバズが主人公です。
色々あり、バズは「ハイパースピード」で動く宇宙船のテスト飛行をします。その飛行時間はバズにとっては4〜5分ですが、他の人にとっては4年でした。
「時間は相対的なもので、早く動けば動くほどその人の時間の経過は相対的にゆっくりになる」という「相対性理論」による「ウラシマ効果」です。(物理…合ってる?)
そんなバズを支えるのが、スペースレンジャーの仲間で、バズの良き理解者であるアリーシャという女性です。彼女の人生は、バズがテスト飛行から帰って来るたびに4年分進んでいます。パートナーと結ばれていたり、妊娠していたり、子供が産まれ、どんどん成長していっていたり。
テスト飛行を繰り返すバズはずっと若いままですが、アリーシャ達はどんどん歳を取り、バズだけが取り残されます。その切なさに胸が締め付けられます。
多様性とディズニー〜「当たり前ですが、何か?」のスタンスで〜

「Disney+」のドキュメントによれば、「アリーシャが象徴するのは充実した人生」です。
アリーシャは、バズがいなかった時間に、愛する人を見つけ、子を産み、育て、責任のある仕事をし、人生を幸せに全うするキャラクターです。
アリーシャのパートナーは女性です。アリーシャとパートナーは、「当たり前」としてすんなり受け入れられて幸せに生活しているように見えます。
私が映画を見ていた時、アリーシャのパートナーが女性だとわかり、次にバズの表情が映し出されるとなった時、バズはどんな表情をするのだろうと思いました。
バズは、アリーシャからパートナーを唐突に紹介され、とても複雑な顔をしていました。でも、嫌な顔ではなかった。驚いた顔です。その驚きも、私には、「4分のフライトから帰ってきたら4年分変化していた世界に戸惑っている上に、いつの間にかアリーシャにも恋人ができていたなんてびっくりした」という「時間についていけなくて戸惑っている」という表情に見えました。
それを見て、私はとても嬉しかったです。少なくとも、バズには性的少数者に対する偏見がないと思えたから。
でも、もしかすると、映画のバズの世界には、性的少数者という概念すらないのかもしれません。誰が誰を愛そうと自由。「性別」という壁がないことが、呼吸をすることと同じように当たり前で、意識にさえ上らない世界なのかもしれません。
「LGBT総合研究所」によると、「LGBT・性的少数者に該当する人は10%」いるということです。40人学級だったら、自覚しているかどうかは除き、4人いるということです。
参考LGBT総合研究所LGBT・性的少数者に該当する人は10%と判明
教員として、生徒のカミングアウトを受けたこともあるし、当事者の講演を聞いたこともあります。本来素晴らしいことであるはずの「愛」で苦しむことは、本当に切なくて悲しいものです。
私が教員としてできることは、当事者の生徒の気持ちを受け止め、そうではない生徒達に差別の不合理さを伝えることですが、伝えるタイミングを測ったり、具体的な事例を出せなかったり、苦慮することもあります。
幸い、古典の世界では、男性同士の相聞歌(ラブレターの送り合い)はよくあります。1000年も残っている作品ですから、詠まれてれている愛情はどれも素晴らしく、ちょこちょこ「愛の多様性は当たり前、どんな形であれ、人を愛する心は美しいよね」という話を授業中に挟むことはします。作文や小論文の指導の時に、国連の動画や新聞記事などを用いて、客観的・論理的に差別の不合理さを示すようにしています。
しかし、それも「目の前にいる生徒達」だけにしか伝えられらないし、「差別がある」という前提での話になってしまいます。
そもそも、人間は「知らなければ知らないまま」ということはたくさんあります。「相対性理論」だって、知らないで一生を終えても何の不都合もない場合も多いでしょう。事実、アインシュタインの前は、そんなことを知らない人間ばかりだったのだから。
「これは差別されることなんだ」という「知識」がなければ、子供達は差別をしない可能性が高くなると思うのです。
映画「42〜世界を変えた男〜」は、差別が今よりも苛烈な時代に、黒人として初めて大リーグの選手になったジャッキー・ロビンソンの人生を描いています。
その中に、ジャッキーが打席に立った時、白人の子供が客席からヤジを飛ばすシーンがあります。その子供は、最初、周囲の大人達が激しく、口汚くジャッキー・ロビンソンを罵るヤジに戸惑っていました。しかし、周囲の様子を見て、自分も「勇気を出して」シャッキーを罵るヤジを飛ばすようになってしまいます。黒人を差別するのが当然という周囲の大人に感化されたのでしょう。この子供は、差別の実態を知り、継承してしまったのです。
生徒達と話をしていると、世の中にある差別に対し、「なせ? 差別する理由がどこにあるの? 誰も迷惑してないのに」という極めて論理的で真っ当な意見をいう生徒が多いです。それは、社会に「差別」を不合理だとするする考えが以前より増え、接する機会が多くなったからでしょう。
現在の高校生より若い子供達には、「多様性を差別することは不合理だ」と教えるより、「多様性があるのは当たり前で、誰も侵しようのない権利なのだ」と刷り込んでおくほうが、ダイバーシティの実現のためには重要なのかもしれません。
老若男女、特に若い世代に与える影響が大きいディズニーが、バズやアリーシャを通して、愛の多様性について、「当たり前ですが、何か?」というように、議論の余地がない既得権益として描いたことは大きいと思いました。

ディズニーが送る「夢と魔法と社会的責務」を感じることができる映画でした。
ソックス(アメリカ版ドラえもん)最高!
固い内容になりましたが、映画『バズ・ライトイヤー』は文句なしに面白かったです。なんだか『トップガン・マーベリック』に重なる所もありました。
エンドロールの時のオーケストラ演奏も素晴らしかった! 金管(トロンボーン)がすごくカッコいいです!吹奏楽部員は、是非最後まで見ていって見てくださいね。
細部までこだわっているのは、さすがディズニーでした。
特筆すべきは、猫型ロボットのソックス!
可愛くて頼りになって、最高!と思わず興奮してしまいました。
充電する姿や、口から便利道具を出す姿が可愛いです。(アメリカ版ドラえもん?)
かまいたちの山内さんの吹き替えもよく合っていました。
ソックスのぬいぐるみが欲しくなり、映画終わりにグッズ売り場に行ったら、まさかの売り切れ・・・

ネットで買えますが、感動と共に持ち帰りたかったので、もう一度「バズ・ライトイヤー」を見に行って、買って帰ろうかなと思いました。