

進学校は、生徒がしっかりしているから、先生はやることなくて楽でしょう?
担任がないと楽そう。
先生って、夏休みも冬休みも春休みまであっていいな〜
これらは、実際に私が言われた言葉です。

全部違います(涙)
先生の世界は、知られているようで知られていません。
この記事では、高校の担任をしている先生の仕事について現役教員が説明します。
学校の先生が生徒の前にいる時以外の様子を知りたい人、将来学校の先生になりたい人、教員採用試験対策で教員の1日を具体的にイメージしたい人におすすめの記事です。
ただし、これは私が勤務している地域の話です。他の地域では呼び方や分担などが違うと思います。
目次
教員の職種「教諭・講師・非常勤講師」について
一括りで教員と言っても、いくつか種類があります。
教諭
教員免許を持ち、採用試験に合格した教員。教員の中の大多数を占める。基本的には定年まで勤務する。校務分掌(時間割作成、模試の申し込みなどの学校運営の仕事)、部活、授業、学校行事など全ての学校生活に関係する。教諭だけでなく、指導教諭や主幹教諭などのリーダー的教員もいる。
講師
教員免許を持っているので生徒に教える資格は持っているが、採用試験に合格していないため、基本的には1年契約。担任を持つことは少ないが、その他の仕事は教諭とほぼ同じ。大学卒業してすぐなど、若い人が多い。
非常勤講師
教員免許を持っているが、授業だけしかしない働き方の教員。教諭や講師と違い、非常勤講師は授業がある時間だけ学校に来る。1コマいくらで勤務する。行事には全く出ない、職員室にも滅多にいない先生は、非常勤講師の確率が高い。学校を退職した元教諭などが多いが、働き方を考えてあえて非常勤を選ぶ先生もいる。

担任を持っている先生は、多くが教諭です。

出勤・登校
生徒が登校する時間帯に教員も出勤します。
早い遅いは個人差があります。通勤が1時間以上かかったりする人や、自分の子供のお弁当を作ったり、保育園などに子供を送って行ったりする人は、割とギリギリに着くこともあります。
管理職や若手、家が近い教員など、その時間に学校にいる教員が手分けして保護者からの欠席連絡などを受けます。今は、GoogleクラスルームやclassiなどのICTを活用した出欠連絡が増えてきています。
生徒が登校中に怪我をしていたら手当をしたり、交通事故に遭っていたら現場に駆けつけたりすることもあります。
職員朝礼
勤務時間になったら、職員朝礼があります。毎日ではなく、決まった曜日や大きな行事があるときには、校長から講師まで、職員が1つの職員室に集まります。
「1つの職員室に集まる」と書いたのは、高校は広域から生徒が集まり、小中学校より規模が大きいので、職員室が複数に分かれていることが多いからです。
担任は、職員朝礼で出た連絡事項のうち、生徒に関係するものをメモします。職員朝礼では、全体に連絡することを担当者が口頭で伝えます。先生が80人とか100人とかいる前で大きな声で連絡しますので、若手の先生なんかは緊張するようです。
HR(ホームルーム)
担任は、自分のクラスに移動し、朝のHRをします。多くは、生徒たちに1日の日程を先生が説明するスタイルですが、担任によっては生徒たちに司会をさせることもあるようです。
朝のHRでは、生徒達の声や表情、姿勢、視線などから、クラス(生徒達)のコンディションを読み取ります。生徒達の様子により、「この連絡を今しても生徒の頭に入らないから、帰りのHRに回そう」などの判断をし、生徒達が1日を過ごす上で必要な情報を伝えます。
健康観察、提出物回収、個別の生徒への連絡、出欠確認などものこの時間にします。
朝のHRは10分や15分くらいしかないので、結構忙しいです。1時間目の授業が入っていたらすぐに授業準備に取り掛からないといけないし、連絡無しで登校していない生徒がいたら保護者に連絡を入れないといけないので、朝のHRを効率よく終わらせる必要があります。
授業
自分のクラスには、教科担として授業に行きます。理科や地歴公民などの選択制の教科の先生は、クラスの生徒全員の授業態度や学力を直接見られないのが困ると言っていました。
1人の先生が受け持つ時数は、5単位(1週間に5回授業がある)クラスを3つくらいです。会議や総合的な探究の時間などを入れると、週20単位前後が多いと思います。
昔はチョークと黒板と教科書だけの授業でしたが、今は、ICTが進んでいるので、プロジェクターとタブレットとワークシートが要ります。
「教え込む」授業では、教えたことが生徒の頭に残らないので、「考えさせる」授業をする必要あり、その道具としてICTは効果的です。
「考えさせる」授業をしようと思ったら、先生の事前準備が大変です。何もない状態で、生徒に「考えよう」と言っても、知らないことは考えられないし、手がかりが全くなければわからないし、何よりつまらない。だから、最低限の知識をサッと教えた上で、ヒントになるようなワークシート(プリント)や映像、教科書に関連した他の文章などを準備しないといけません。これが結構時間がかかります。
授業をしようと思ったら、1単元(1つの話)ごとに、教材研究をして、授業計画や板書計画を作り、授業で使うワークシートを作り、資料を探して授業用に編集し、ワークシートなどを印刷し、授業で扱う時間がない部分を学ばせるための宿題を準備します。
これらは最低限することで、授業に手をかけようと思えば思うほど、際限なく時間が必要です。それくらい教材研究は奥深いです。
ベテランになれば授業準備が楽になるかというと、イエスでありノーでもあります。なぜなら、目の前の生徒は毎年・毎日違うので、その生徒達に合わせた授業をするには、ベテランでも若手でも事前準備が必要だからです。しかし、ベテランは授業のバリエーションが増え、扱ったことのある教材が増えるので、若手よりは早く、深い授業準備をすることができます。
私は、代理で急に授業が入り、素早く授業準備をして手応えのある授業ができた時、「教員として成長したな〜」と自分で嬉しく思ったことがあります。
校務分掌
先生達は、必ずどこかの校務分掌に所属します。教務部・進路指導部・生徒指導部・教育相談部などです。
校務分掌は、学校運営のための係のようなものです。
- 教務部…時間割、入試、教育課程、成績処理など、学校生活の制度に関すること。
- 生徒指導部…生徒会、校則、交通安全、部活動など、生徒の生活面に関すること。
- 進路指導部…進路情報収集、模試の実施、就職指導、進学指導など、生徒の進路に関すること。
- 教育相談部…カウンセリング、専門機関との連携、居場所の提供など、生徒の心のケアに関すること。
その他、ICT機器の設定や管理、PTAとの連携、図書の管理、総合的な探究の時間の学習方法の研究など、部署の名前は違っても、学校を運営する上で必要な仕事が、各先生の得意分野を考慮されながら割り振られます。
ちなみに、私は、いくつかの分掌を経験していますが、進路指導部が多かったです。
各部の主任の先生を中心に、行事や活動によって仕事を分担し、生徒の学校生活や行事が滞りなく行われるよう、授業の空き時間を使って分掌の仕事を進めます。こういう仕事は、生徒達が知らない仕事だと思います。
担任以外の教諭の先生達は、この分掌の仕事のウェイトが高い場合が多いです。「担任を持っていないと暇」ということは一切なく、かえって担任達より忙しい場合もよくあります。
教科
各教科で共通している仕事は、次のようなものがあります。
- テスト作成、採点
- 成績を審議する
- 教科書や副教材を決める
体育大会は体育科、英検は英語科など、教科ごとの仕事もあります。
国語は、外部から送られてくる作文や弁論の要項をまとめて生徒に提示したり、小論文の指導をしたりすることがあります。
担任ならではの仕事

担任は、クラスの生徒全員に責任を持ちます。担任達は、生徒がより良い学校生活を送るためのアシストをしたり、より高い目標を達成するためのアドバイスをしたりするなど、とにかく生徒ファーストで献身的に働いています。
学級通信作成
担任としては結構大切な仕事です。生徒は、通信をよく読みますので、先生の考えや個性がよく伝わります。伝達ミスを防ぐため、行事予定や提出物なども書き込みます。生徒や保護者との関係性を作るきっかけになります。
生徒の出欠管理
生徒の出欠を学校のシステムに入力します。コロナ禍で出席停止が増え、管理が複雑になっているので、生徒に不利益にならないように注意して出欠管理をします。
面談
進路・学校生活改善・悩み相談・三者面談など、目的は様々ですが、担任は個々の生徒理解のため、面談を年に2〜3回くらい行います。生徒から出た悩みや相談などを担任はずっと忘れずにいるので、生徒の皆さんには、困ったら担任に相談することをお勧めします。
年度初めの4月、保護者と話す7〜8月、進路を決める10月が多いです。
面談では、私は、生徒になるべく話をさせるようにし、生徒把握に努めます。面談をすることにより、生徒が目的を達成したり、状況を改善したりするにはどうすればいいのかを一緒に考える材料にします。
学校行事に引率
遠足、大学や職場の見学、修学旅行など、担任はクラスの生徒が学校行事で行く所にはどこへでも一緒に行きます。
「無料で修学旅行に行ける」と言われますが、楽しむのは生徒であり、教員はツアーコンダクターのように働きます。夜は生徒達の見回りをし、翌日の打ち合わせをして0時ごろ就寝し、5時起床などということもあります。
インフルエンザやコロナの生徒が出たら担任はその生徒と一緒にホテルで待機して保護者にひき渡りたり、怪我をした生徒がいたら救急車で病院に付き添うこともあります。
生徒向けの料理ばかり食べていたら胃がもたれることもあるし、無尽蔵の体力を持つ生徒と行動を共にするので、結構大変です(^_^;)
でも、生徒が楽しそうにしている姿を見るのは、担任として嬉しいことです。
保護者対応
生徒と共に、保護者と信頼関係を築くのも担任の仕事です。
担任の方が保護者より若いと、気後をしてうまく話せないこともあります。しかし、生徒を第一に考えるチームとして協力体制を築くように努力します。
クラスの生徒を守る
生徒が単位を落としたり、生徒指導上の問題を起こしたりしても、担任はとにかくクラスの生徒を守ります。生徒の不利にならないよう、様々な先生や機関に働きかけます。生徒の家庭の事情や生徒の特性、人間関係など、普段から生徒理解を深めておくと、生徒を庇いやすいです。
そのほかの仕事
学校運営上の手続きや、教員の資質向上のための研修などもあります。
・旅行命令書・復命書・起案作成
・出退勤入力
・コンプライアンスやストレスチェックなどのアンケート記入
・職員会議
・中学校などへの出前授業
・生徒募集関連行事(オープンスクールなど)
・校内研修・校外研修(仕事として定められた研修)
・自主研修(勉強会や大学などの研修に自主的に参加)など
休暇と部活
担任も年休を申請すれば休むことは可能です。ただ、不思議なことに、担任がいないときに限ってクラスに様々な事件が起こります。ガラスが割れたり事故に遭ったり。だから、生徒が学校にいる限り、学校にいないと色々心配なので、なるべく休みをとりたくないという人が多いです。
夏休みなどの長期休暇は、生徒が登校しなくても教員は勤務です。分掌の仕事や研修、次の学期の準備などをしています。ただ、生徒が学校にいる時、教員は常に気持ちを張っていますので、長期休暇の時は、楽な気持ちで仕事をすることができます。
土日も活動する部活の顧問は、休みが取りにくいのは事実です。好きで運動部や吹奏楽部の顧問をしているのならいいのですが、そうでなければ休みが少ないので、心身ともにかなりきついと思います。
4月に部活動の顧問決めがありますので、その時に運動部を拒否をするか、土日活動なしなどの条件をつけられればいいのですが、それができない場合は、かなり辛いと思います。
部活動に関しては、中学校のことがよく取り沙汰されますが、高校も同じ課題を持っています。
部活動は、正式な教員の仕事ではありません。しかし、多くの教員がボランティアで引き受け、教員の自己犠牲で成り立っているのが現状です。
外部指導者の話が良く出ていますが、それだけでは教員の働き方の根本的な是正になりません。試合や大会の申し込み、生徒の安全管理、試合や大会運営、引率など、部活の仕事は教員の仕事の中でかなり大きなウエイトを占めています。
今後の社会的議論が進展するのを待つしかありません。
担任の仕事を一言で言うと
いかがでしたか? この他にも担任の仕事はあります。
担任を受け持つかどうかは、本人の希望をベースに、管理職や主任が決めます。
担任の仕事を一言で言うと

どんな時でも「生徒のそばで、生徒のために」行動すること
だと言えると思います。
決して楽な仕事ではありませんが、とてもやりがいがある仕事です。