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ICT授業を実践してみて実感した5つのメリット・デメリット

私はICTを授業に積極的に導入しています。
もはやICTがなければ授業が成り立たないほどです。

私がICTをどんどん使うようになった理由は、

楽しそうだから!

昔は、生徒がつまらなそうにするのは、生徒に学習する意欲がないからだと思っていました。
しかし、今は、生徒がつまらないと思う授業をしている自分の責任だと思うようになりました。
(きっかけは覚えていませんが、長い試行錯誤や暗中模索の結果、そう思うようになったような気がします。)

誰でも、つまらない授業より楽しい授業の方がいいですよね。
楽しくて力がつく授業なら最高です!

楽しみながら授業をするには、どうすればいいのだろうと思っていた矢先、コロナ禍に突入。
いつもは動きがとっても遅いのに、あれよあれよと学校のICT環境が整備されてきました。     

これを使ってみよう!
珍しくて、生徒が喜ぶに違いない!

と思ったのが、ICTを積極的に使うようになったきっかけです。

この記事では、次のことがわかります。

・ICT授業導入に際し、よく言われているメリット・デメリット
・実際に、半年以上、3種類のICT授業を同時に実施して実感したメリット・デメリット

目次

よく言われているICT授業のメリット・デメリット

よく記事で紹介されているメリットやデメリットは、次のようなものがあります。

メリット
  • 生徒が興味関心を抱く
  • 主体的・協働的な学びができる
  • 個別最適な学習ができる
  • 生徒にITリテラシーが身につく
  • リモート授業ができる
デメリット
  • ICT環境を整える必要がある
  • 導入コストがかかる
  • 教員側のICT活用能力が必要

確かにこれらのことが言えます。
しかし、実際はもっと複雑な要素が絡み合って、メリットもデメリットもこれくらいでは足りないと思うようになってきました。

私がICTを本格的に授業で使うようになり、半年以上が経過しました。
今年は、学科をまたがり、学力やゴールが大きく違う3種類のクラスを担当していますので、教科書が6冊あります(泣)
従って、今年は、常に3種類の異なるICT授業を同時に展開することになりました。

その実践を通じ、ICT授業のさまざまな側面が見えてきまし

ICT授業を実際に継続して感じたメリット5つ

メリット①:授業の幅が飛躍的に広がった

かつての授業は、パソコンをプロジェクターに繋ぎ、本文や画像・映像を前に映し出すことがメインでした。
しかし、ICTをフル活用すると、

  • Googleクラスルームで双方向の意見交換、資料配布、動画配信
  • Googleフォームでアンケートを取って即時フィードバック
  • Googleフォームで小テスト
  • GoogleドキュメントやWordを使った作文
  • GoogleスライドやPowerPointを使った発表、ポスター作成
  • ジャムボードを使ったKJ法
  • GoodNotesを使い、映し出した画像に書き込みをする授業

などなど、工夫をすればできることがどんどん広がります。

やはり、最大のメリットは、いろいろな授業が実施できるようになったということです。

メリット②:ペーパーレスで書類の管理が楽

学校は、いまだに信じられないほどの紙文化です。
多くの生徒や保護者を相手にしているので多少は仕方ないですが、それでも無駄な紙を大量に使っています。

授業では毎回ワークシートを印刷し、資料・解答・宿題も印刷で、印刷をするのに時間を取られていました。
教員同士の連絡も紙で印刷し、一人一人の連絡棚に入れないといけない始末でした。
しかし、生徒に配る資料や解答などは、Googleクラスルームなどで配ることができるようになりました。

使う紙を減らすと、仕事が効率化され、保管場所が空くので机が広くなり、学校の事務室も経費節減で喜びます
「あのプリント、どこにやったっけ〜?」という、紙を探すストレスからも解放されるようになりました。

メリット③:生徒がワクワクしながら授業に参加するようになった

授業に興味関心を持たせるって、すごく難しいことですよね。
ICT授業では、それが可能でした。

事実、「今日はタブレットを使いません」と生徒に言うと、生徒はがっかりします。
次はどんなことをするのだろうと、生徒は楽しみにしているようです。
また、(今の所)居眠りをする生徒が出ません。指でキーボードを叩くからでしょうか?

一昔前では魔法のような授業が展開できますので、ICT授業には本当に多くの可能性があると思っています。

メリット④ 授業の記録が残る

複数のクラスを担当していると、授業がどこまで進んだかわからなくなることがありませんか?

しかし、授業で使う教科書やプリントなどを全てGoodNotesにアップし、プロジェクターで映し出しながら書き込みをしていくと、授業の進捗状況もクラスごとに一目瞭然です
さらに、GoodNotesを見れば授業の跡が残っているので、テスト作成に非常に重宝します。

メリット⑤ 添削が楽

小論文の添削や、国語の個人添削を頼んでくる生徒がいます。
学校で添削して返却することができればいいのですが、持ち帰って家で添削することもよくあります。
そうすると、金曜に提出されたものを土曜に添削したら、生徒に返却するのは月曜になってしまします。

しかし、Googleクラスルームやclassiを使って土曜日に返却すれば、生徒は日曜日に振り返りをすることができます。

大学受験直前や、長期休暇の時にはとても便利でした。

ICT授業を実際に継続して感じた5つのデメリット

デメリット①:準備が煩雑

従来の多くの授業の準備は、ワークシートを作って印刷するくらいでした。

しかし、ICTを使った授業では、前もってGoogleクラスルームに資料を配布したり、質問を作っておいたり、GoodNotesにワークシートを読み込んでおいたりと、事前に準備することが結構あります。
それも、Adobe Scanを作ってPDF化し、それをGoogleドライブを経由してiPadに送るといった、割と煩雑な準備もあります。
以下の記事にその手順を書いています。

慣れたら大丈夫ですが、慣れるまでは結構手間取ると思いました。

しかし、今たくさんの準備をしておくと、後々、少し直しただけで他の教材にも使えるようになると思います。
また、他の人が準備したものをまるっともらうことも可能です。
だから、デメリットは、最初の方だけかもしれません。

デメリット②:生徒が慣れてくると、返って思考停止になる

楽しいことにはすぐに慣れるのが人間です。

生徒は、ICTを使って新しいことをさせると、ワクワクしながら授業に参加しますが、慣れてくると従来の授業のように集中しなくなります。
また、授業とは関係のないサイトを開いたり、ゲームをしたりします。
端末をおもちゃ代わりに使いたい生徒にとって、ICT利用が目的化し、学習内容が薄くなってしまうこともありました。

ICTを使った授業は刺激が強い分、使い過ぎると、返って生徒が考えなくなり、思考停止になると思いました。

ICTは、目的ではなく、あくまで手段。
文房具の一つとして使い、アナログとデジタルの利点を考えながら、バランスよく取り入れていくことが重要だと思いました。

デメリット③クラスの人数が多い場合、できることに制約がある

Googleクラスルームの「質問」機能を使うと、生徒が記述問題の解答をメールで送るように教員に送り返すことができます。
39人クラスだと、とても全員分の解答を添削することはできません。
3人で1台のタブレットを使い、13個の解答が返ってくるなら、まだ添削ができます。

ジャムボードでKJ法をするときも、生徒が付箋を貼った画面を共有しようと思ったら、1画面を共有するのは10人くらいまでがちょうどいいと感じました。

このように、1人1台端末を持っていても、双方向の活動をする時には人数の制約をしないと、効果的な振り返りやフィードバックができないということも感じています。

1人1台の最大の恩恵は、端末上にアップされた資料を生徒が自分のペースでみたり、調べ学習をしたりすることだと思います。

ICTで作文やスライドなど、生徒が作成したものを提出させることは簡単ですが、評価の仕方も一緒に考えないと、教員がパンクすると思いました。

デメリット④ ICT活用力の差が激しい

想定されていたことですが、ICT活用力は教員間の差が激しいです。
同じ学年を持っている先生が、一方はICTをバリバリ使い、一方は昔ながらのチョークと黒板の授業という状況が発生しています。
どちらの方がいいとは一概に言えませんが、ICT活用には差があるということは歴然としています。

教員のICT活用力だけでなく、Z世代と言われる生徒も案外ICT活用力が弱いです。
彼らは、SNSをよく使うけれど、クラウドサービスには慣れていないようです。
GoogleやMicrosoftのアカウントは持っているけれど、ログインできなかったり、Wi-Fiに繋げなかったり、検索できなかったりと、生徒達の意外な実態がありました。

また、ICT活用力とはずれますが、家庭間格差も大きいです。
経済的にWi-Fiを契約できない家庭や、充電器を買えない家庭もあります。
保護者のITリテラシーも様々です。

まだ学校での活用が始まったばかりなので、ICT活用に関しては、生徒にも教員にも様々な問題があることは事実です。

デメリット⑤ 教える側の目線が揃っていない

研修に出かけると、ICTの活用が効果的だという声がある一方、ICTにする意味がわからないという、真反対の意見があります。
ICTのメリットとデメリットは表裏一体なので、教える側の見方によって変わります。

ICT教育の導入により、生徒の学びはどのように変容していくのか。
1人1台端末で学んだ生徒は、そうでない生徒と何が変わるのか。
中学生から1人1台端末で学んだ生徒と、小学校から1人1台端末で学んだ生徒では、また違いがあるでしょう。

教える側の誰1人として、まだゴール(目指すべき教育成果・生徒の姿)が予測できません。

教える側の目線が揃っていない以上、今自分ができることを試行錯誤していくしかないのが現状だと思います。

まとめ

将来生徒が生きるのは、society5.0と呼ばれる社会です。
その社会を生きるためには、学校でITリテラシーを高めるのは当然必要なことですが、まだまだ学校現場は試行錯誤の状態です。

この2〜3年は教育の大きな転換期になるでしょう。

ICT授業を継続するのは未知の経験ですが、互いに試行錯誤しながら、情報を共有していきましょう!